2011-12-25

中尊寺のメリークリスマス


朝、目覚めて窓を開けると、一面が銀世界とはこのことか。岩手県一関市の山奥に一晩で数十センチ積もった雪の上で歩くリズムに合わせて、新雪を踏み込む柔らかい音がする。そう言えば、冬の東北を訪ねるのは初めてだった。寒いのは極度に苦手だが、ヒートテックを重ね着してダウンジャケットを着ていれば、冬景色を楽しむのも意外にいける。そうだ。平泉へ行こう。今年は何度も一関まで足を運んでいながら、まだ一度も平泉の世界遺産を拝んでいない。雪に埋もれたレンタカーを動かして、カーナビの目的地を平泉の中尊寺に設定した。

想定していたよりも観光客は少なく、適度な静けさが絶妙に心地よい。中尊寺の表参道たる月見坂を上りながら、樹齢300年超の杉の並木道に積もる雪を愛でる。中尊寺というと金色堂のイメージが先行していたが、参道沿いの様々な御堂が実に味わい深い。中尊寺本堂をはじめ、不動堂・阿弥陀堂・弁財天堂など、見事な佇まいを湛える御堂が立ち並ぶ。寺は、何故かくも人の心を落ち着かせるのだろうか。春は夜桜、夏には星、秋に満月、冬には雪。それで十分、茶はうまい。中尊寺のメリークリスマス。

 

2011-12-24

気仙沼・陸前高田・大船渡の被災現場調査


一関で雪道走行用4WDのレンタカーを確保して、気仙沼陸前高田大船渡へ。これまで何度も被災地の現場を訪ねてきたが、震災から9ヶ月経った現場を自分のペースで改めて理解したいと考えて沿岸部の実地調査を決行した。雪の舞い散る山道を駆け抜けて気仙沼に到着した後、被害の大きかった沿岸部に入り込んで隈無く視察していくと、改めて地盤沈下のインパクトを肌で感じずにはいられない。海辺での1m弱の地盤沈下の結果として、海水が音を立てて流れ込む敷地や水没した舗道が随所に目立つ。こうした地区は“盛土嵩上げ”される計画ではあるものの、実際に現場を見ていると、ここに盛土した上に施設や住宅を建てて本当に大丈夫なのだろうかとの素朴な懸念が沸き起こるのも事実。生きた地面と如何に折り合いをつけて生きていくのかという問いを意識せずにはいられなかった。


車の進路を北に向けて陸前高田大船渡へ。ここでも地盤沈下後の土地再生は大きな課題。沿岸部は高く積まれた土嚢が目立ち、海面が高いのか?それとも地面が低いのか?と不思議な感覚に襲われる。各地で盛土嵩上げの工事が進められているのだが、ここにどのような生活空間を形成していくのかについて考えると幾つかの大きな論点が見えてくる。一つは、自然との共生という大前提における防災・減災の生活空間形成。もう一つは、少子高齢・人口減少時代に応じた生活空間形成。これらの論点に正面から向き合いながら復興まちづくり計画を詳細化して合意形成を得るプロセスは容易ではない。しかし、復旧の延長線上で進めてしまえば無機質な町が再現される公算が高い。それならば、何かできるアクションをとってみたい。批評家はいらない。為すか、為さぬか。Just do it!!

2011-12-23

気仙沼の住民対話集会に聞くリアルな声


東京大学のチーム8名(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)で宮城県気仙沼市入り。復興まちづくり支援として我々が11月より進めてきた「国の復興交付金の活用モデル」の検討について、年明けのプレゼンテーションに向けた摺り合わせのための現地入りである。現在、気仙沼では市が策定した復興計画を住民に説明する住民対話集会が開催されており、市との摺り合わせに先立って我々は集会を傍聴した。200名程度の参加を想定していた市民会館に参集したのは400名超の住民。市長と市役所職員から概要説明が終わると、質疑応答では住民からの具体的な質問が飛び交う。「結局、自分の土地はいくらで買い取ってもらえるのか?」「防災集団移転したいと個人では思っていても、既に自治会が空中分解している状況でどうすればいいのか?」など、住民のみなさんの現実的な懸念事項が重く伝わってきた。市としても、国・県・市民の間で交錯する様々な議論をまとめるのに必死だ。


集会直後、我々は気仙沼市役所の企画政策課・都市計画課・住宅課とディスカッション。年明けに我々から共有させて頂く「国の復興交付金の活用モデル」に関する提案内容について摺り合わせを行った。国の東日本大震災復興交付金は基幹事業と効果促進事業から構成され、前者が5省40事業としてハード事業にフォーカスするのに対して、後者は資金の使途自由度の高さを担保しながらハード・ソフト両事業を幅広く対象とする。これらを如何に効果的に活用できる否かによって、復興のスピード・規模・方向性に大きな変化が生まれる。そこで、市の復興計画を推進するために国の復興交付金を効果的に活用する事業モデルを検討した上、実行手段として運営組織や条例制定までを想定した設計を行うのが我々の取組。この領域については、外部の知見が役立つ余地も大きい。住民対話集会で強く伝わってきた市民の方々の痛烈な想いに少しでも寄与でればと想いを新たにした。

2011-12-21

J-WAVE@六本木ヒルズ



J-WAVEでオンエアするスポットCM(au "LISMO WAVE")ナレーションの収録で六本木ヒルズへ。東京の夜景が見渡せる33Fのフロアには、クリエイティブな空気感が漂う。やはり他局とは立っているステージが違う。2010年まで六本木ヒルズ27FのBoozオフィスで戦略コンサルティングプロジェクトに従事していた自分としては、同じビルの異なるフロアでこのクリエイティブな時間が流れていたことを改めて意識して何か不思議な感覚。この世界ではパラレルに物事が進行している。そんな思索を巡らせながらスタジオ入りして収録した。

自分にとってJ-WAVEは良縁的な存在で、最初の出会いは19歳。上京して聴き始め、奇遇な繋がりから大学2年のときにはWebデザイナーとしてJ-WAVEの番組サイトの制作を担当していた。その番組がロバート・ハリスさんの『SENSE&EMOTION』で、スタジオでハリスさんに会って多くの刺激を受けた。プロの世界に影響を受けながら大学のサークルでラジオ番組制作にのめり込み、J-WAVE系列の名古屋ZIP-FMのDJコンテストに勢いでエントリー、3次の審査を経てシルバーグランプリを受賞した20歳が転機となった。

直後、お声かけを頂いたDJ事務所に所属してDJ/MC/ナレーターと声による表現活動を開始。思い起こすだけでも実にエキサイティングな経験の連続で、表現活動の追求は今もなお日に日に新しい。一方、メディア業界ならではの権謀術数も多々経験し、油断をすれば巧みに人を貶めてくるフォースの暗黒面の存在とも闘わなければならない。その中でも自分をドライブさせる唯一の拠り所は、人にポジティブな想いを届けたいという信念のみ。久しぶりにJ-WAVEとの接点をもち、原点に回帰するきっかけを得て良い流れを感じた。

2011-12-17

道のカフェ@陸前高田:新たなる展望


3.11から9ヶ月が経ち、気がつけば季節は冬。初夏に立ち上げた復興支援プロジェクト「道のカフェ」は、寒い冬も被災地のみなさんと一緒に復興への道を歩みたいとの想いから、夏・秋に続いて冬の開催も実現するに至った。「道のカフェ」は、被災地にオープンスペースのカフェ空間を創出し、地域の皆様がコーヒーを飲みながら対話をする場を生み出すことで、地域コミュニティの再構築を支援する取組。松下政経塾の地域ネットワークでフィールドを設計し、スターバックスがカフェ空間を生み出し、キヤノンの写真技術で被災地の皆様の姿を全国に発信する連携プレー。6月に有志数名でブレストした夕食から帰宅後、自然と自分の頭の中に浮かんできたイメージから「道のカフェ」と名付け、そのまま明け方までかけて一気にプロジェクト企画書を仕上げた。縁が縁を呼んで垂直立ち上がりの実現に漕ぎ着け、以来、自分は全体プロジェクト設計・運営を共同で務めながら現在に至る。



この「道のカフェ」は、単なる一過性のイベントではなく、カフェの開催前と開催後のプロセスを伴う中長期の取組であることに大きな特徴がある。これは、地域のみなさんとプロジェクトのスタッフが恊働で創り上げるカフェという設計による。開催に当たっては、地域のみなさんが仮設住宅を一軒ずつ回って声かけしながら住宅内の状況を把握するとともに、プロジェクトのスタッフと綿密に連絡を取り合うなかで地域外との絆を深める。カフェ開催当日には一緒にお店を創り出し、恊働の成功体験によって一層お互いの絆が深められる。カフェ開催後には、足を運んでくれた方々に御礼を伝えて回るなかで新たな会話が生まれ、地域のみなさんと参加スタッフの間では自然発生的に個別の対話が生まれていく。こうして人と人とのつながりが生み出されていく場こそ、今後の復興まちづくりを切り拓く重要なプラットフォームになるのではないかと自分は強く思っている。



一方、プロジェクト企画運営側の我々にとっての課題は、持続可能なプロジェクトモデルへのシフトであった。というのも、夏と秋の開催では、スターバックスさんのご厚意で移動店舗型車輌のスターバックス号を稼働して頂き、全国各地からエース級のパートナーのみなさんに毎回20名近く参集頂いて実現していた。これは一つのスタイルとして大いに意義深いのだが、同時にコストも大きい。そこで、今回の冬開催に当たってスターバックスさんが新たにオペレーション設計して下さったのは、スターバックス号を使わずに簡易器材だけでカフェ空間を作るという、6人体制のミニチュア型「道のカフェ」だった。地域のみなさんにもオペレーションに深くコミットして頂く形となり、仮設住宅にお住まいのお母さん・お婆さん・お子さんまでもが大活躍。陸前高田市の米崎小学校&中学校の仮設住宅敷地内にて、見事にミニチュア型「道のカフェ」が実現された。



実際、現場では非常に面白い展開となった。最初、設営直後にプロジェクトスタッフから地域スタッフのみなさんにオペレーションを説明すると、横文字の並ぶ単語のオンパレードにお婆さん方は「ちんぷんかんぷん」な表情を浮かべていた。そこで方針転換。オーダーを受けるドリンクは3種類のみで、オペレーション上の記号も「A, B, C」。説明は簡単に切り上げて、とにかくリハーサルで実践練習。注文をとる人、コーヒーをいれる人、ミルクを作る人… それぞれに地域スタッフのみなさんに入ってもらい、リハをしてみて実際にできると歓喜の声があがる。お店をオープンして暫くは随所で炎上していたが、それもご愛嬌。しかし、30分、1時間と経つにつれて地域スタッフのみなさんは瞬く間に要領をつかみ、お互いに世間話もしながらの余裕ぶり。スタッフ内でも笑顔が溢れ、コーヒーを飲みに来た地域の方々も店舗の回りで話が弾んでいた。現場でプロジェクトを検証していた自分は「これだ!」と確信した。



米崎小学校&中学校と2箇所の仮設住宅敷地内で開催したミニチュア型「道のカフェ」を終えて地域スタッフのみなさんと話していると、様々な率直な声を伝えてくれた。「支援を受けるだけでは気がひける時期にさしかかっているから、こんなふうに自分たちも一緒に参加して作るのはすごくイイ」「仮設住宅にはいろんな人が混ざって住んでいるので、話をするのにいいきっかけになる」「家の中に籠ってしまっている人もいるから、こういう機会があると声かけで回りやすい」などなど。何とも言えない温かい気もちが内側から沸き起こる。現在、被災地の各自治体では政治・行政による復興計画の具体化フェーズに入っているが、地域のみなさんの生活現場を知るにつけ、とても政治・行政の動きを待っていられない状況がよく分かる。だからこそ、個人的には地域コミュニティが牽引するまちづくりの可能性を引き出すご支援をしたい。「道のカフェ」には、新たな地域づくりに至る道があるのかもしれない。

2011-12-12

JFN: 赤坂憲雄さんとの対談


今月下旬に2週にわたって放送される全国ネットFMラジオ番組 JFN “ON THE WAY ジャーナル WEEKEND” の対談パーソナリティを務めさせて頂き、半蔵門のスタジオで収録を完了した。今回のゲストは、東北学を提唱して数々の書籍を執筆されたきた民俗学者で、復興構想会議メンバーとして活躍される学習院大学教授の赤坂憲雄さん。福島をはじめ東北各地の現場を歩きながら赤坂さんが見てこられた被災地の姿を率直に伺いつつ、東北が歩んでいく道筋について多角的な視点による深堀を試みた。当然、直ちに何か結論めいたものが出るような議論ではない。しかし、対話を深めることで見えてくるものもある。赤坂さんの言葉には被災地の現場の重みが確かに息づいており、とりわけ「少子高齢化とともに過疎化する社会構造の中で被った原発事故からの再出発」という未曾有の課題を抱えた福島の話には、改めて我々の考えるべきことの大きさを感じざるを得なかった。

今日の対談の中で印象的だったトピックの一つは、復興における草の根の力の重要性である。勿論、政治や行政が復興のために既存の枠組みの中で尽力しているのは分かる。一方、日々の事態は地域の現場で起きている。国の動きを待ってはいられない。ゆえに、地域に住む一人一人が立ち上がって動かざるを得ない。当然、その地に住んでいなければ分からない過酷な境遇に違いない。しかし、地域住民が主体的に行動を起こしていくことに勝る力はない。それが、地域や国の政策をも変えていく。その草の根の力こそ、今後の地域を創るキーになるのではないか。近代の社会モデルが音を立てて崩れる中で、改めて自然に内包される人間の持続可能な社会モデルを考えるとき、自然とともに生きるという基本精神のもとで「自分たちの地域は自分たちで創る」という社会像が自ずと浮き彫りになっているように感じた。

2011-12-11

Act On TV: Nissan "ELGRAND Rider HPS"


先月の帰国直後にTV番組ナレーションを務めさせて頂いたAct On TV新車情報:大人のカスタムカー」が遂に放送開始(@CS, CATV, BB)。AUTECH社が手がける高性能ファクトリーカスタムカーの日産ELGRAND Rider HIGH PERFORMANCE SPEC』と『SERENA Rider PERFORMANCE SPEC』の2台をフィーチャーした30分番組で、ピストン西沢さんの試乗インプレッションを紡ぐ形で番組ナレーションを担当した。演出は、抜群の映像&音楽センスをもつ今村則之監督。昨年「Volkswagen Rシリーズ」の番組ナレーションでお声かけを頂き、クールでスタイリッシュな演出に圧巻(当番組は2010年度Act On TV受賞作品となる)。1年ぶりに再び演出頂く機会を頂き、昨年にも増してエキサイティングな収録へ。ナレーションもHIGH PERFORMANCE SPECを目指して更なる走りに挑戦したい。[番組を見る]

2011-12-10

復興交付金の活用モデル検討@東京大学


東京大学の実務家チーム(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)では、先月11月より、復興まちづくり支援として「国の復興交付金の活用モデル」を検討してきた。対象自治体は、宮城県気仙沼市と岩手県釜石市。市の復興計画を推進するために国の復興交付金を効果的に活用する事業モデルを検討した上、実行手段として運営組織や条例制定までを想定した設計を行うプロジェクト。今日は本郷にて、4つの班に分かれて検討してきた内容を報告する内部プレゼンの機会をもった。自身は気仙沼の検討を担当しており、5人のプロジェクトチームで詰めてきた提案内容を全体に報告した。

国の東日本大震災復興交付金は基幹事業と効果促進事業から構成され、前者が5省40事業としてハード事業にフォーカスしているのに対して、後者は資金の使途自由度の高さを担保しながらハード・ソフト両事業を幅広く対象としている。一方、自治体で策定された復興計画には、100を超える復興メニューが並んでいる。復興交付金は、それら復興メニューの財源として接続する“はず”の補助金。ところが、現実的には接続の担い手が手薄くなり、効果的な補助金の活用に至り難い。そこで、我々の提案の骨子は、まさにその接続を円滑化するモデルの構築。少しでもお役に立てるなら幸いである。

2011-12-04

JAL presents "my Japan Conference"


日本科学未来館にて「JAL presents "my Japan Conference 2011"」が開催され、200名強の来場者が集うエキサイティングなカンファレンスの場でMCを務めさせて頂いた。このカンファレンスは現役学生のプラットフォーム my Japan によって企画・運営されており、この度、JALの協賛と外務省/経済産業省/観光庁の後援を得て実現された。日本だからこそ作れる未来を考えることをコンセプトに、今回は ”Visit Japan ~外国人が来たくなる日本にするためには?~” をテーマとして構成。my Japan 代表を務める上智大学の岡本俊太郎君をはじめ、青山学院大学の倉嶋歩君や渡部晋也君たちとは昨年秋にTEDxYouthを一緒に作り上げた背景があり、以来、自分にできる形で my Japan を応援したいと思っていた際に、岡本君からのお誘いで今回のカンファレンスMC(キュレーション)に参画させて頂いた次第である。

カンファレンスには総勢12名の豪華ゲストが参集。観光庁長官の溝畑宏氏のプレゼンテーションに始まり、次々と多彩な登壇者によるトークが展開された。コミュニケーション、仕組み、コンテンツという3つの切り口からセッションが構成され、Visit Japan を軸に日本だからこそ作れる未来について様々なアイデアが飛び交った。自身はキュレーションという立ち位置で登壇者プレゼンを咀嚼しながらセッションを紡ぎ出す進行をさせて頂いたわけだが、溝畑長官がカンファレンス冒頭で力説されたメッセージが各登壇者の文脈を見事に繋ぐ軸になっていたように思う。日本のポテンシャルを引き出して世界に訴求するには、地域に根ざして自らアクションを起こすことがマスターキー。思考力 x 実行力。my Japan Conference は、そのツインドライブに点火するプラットフォームとなるポテンシャルを秘めている。

2011-11-29

寄稿:茨城県つくば市のICT教育事例書


自身の教育分野における専門性を活かす形で本年より慶應義塾大学SFC研究所の上席訪問所員として参画させて頂いている「地域情報化研究コンソーシアム(代表:國領先生)」の教育分科会では、地方自治体の教育分野におけるICTの利活用について調査研究を進めている。全国の様々な地方自治体に足を運び、首長・教育長・情報システム担当者との議論を深める中で、次第に地方自治体の学校教育におけるICT利活用の実態が浮き彫りとなりつつある。その中でも、教育分野におけるICTの利活用において日本をリードする自治体の一つが“つくば市”。そのつくば市が、ICT教育の最新事例をまとめた本を出版されるということで、調査研究を進める立場から見たつくば市について同書に寄稿させて頂いた。これが、この度、書籍『21世紀のICT教育とその成功の秘訣』として出版されるに至ったことをご案内させて頂きたい。

これまでの研究活動に基づくと、自治体は主として3つのパターンに分類される。すなわち、①ICTインフラ整備の議論に終始している自治体、②ICTリテラシー教育の展開に注力している自治体、③学校教育において積極的にICTを利活用している自治体である。実際には、①ICTインフラ整備や②ICTリテラシー教育の議論にとどまる自治体が殆どであり、③ICT利活用に話が及んでいる自治体は片手で数える程しかない。このような現状の中で、つくば市は“学校教育にICTを存分に利活用している”数少ない自治体の一つ。様々な授業で取り入れられている電子黒板を使ったプレゼンテーション、TV会議システムを利用した環境教育やキャリア教育、スタディーノートポケットやデジカメを実践的に使った授業。そのような実践的ノウハウが集積された本書は、ICT利活用に注目する教育関係者には示唆深い内容となっている。

2011-11-27

炎の1週間タイプログラム完了!


Learning Across Bordersによるスタディープログラム "Thai Civil Society Program 2011" がコンプリートを迎えた。ディレクターのドワイト・クラークさんの引率のもと、タイをフィールドに Civil Society ベースの取組を体感的に学ぶ1週間のショートプログラムは、日本とミャンマーから参加してくれた20名弱の学生それぞれの積極的な貢献によって相互を高め合う場に昇華した。どのセッションでも質問が途切れること無く、グループ内のディスカッション・アジェンダは非常に多岐に及んだ。また、全員の共通言語としての英語によるコミュニケーションの徹底が実現されたことも印象深い。自身はファカルティとして参画している身ではあるものの、参加者のみんなから学ぶことのほうが遥かに多く、貴重な1週間をともに創り上げてくれた全員に御礼申し上げたい。

昨年新設された当プログラムの現場随行は自身も初めてで、日本で地域コミュニティづくりのプロジェクトを推進している立場としては、実に興味深い事例のオンパレードに多くの示唆を得たように思う。イノベーションモデル、人材育成システム、住民エンロールメント…。国の文化に紐づく独自の視点はあるものの、国を越えて汎用的に応用できる視点も多々散見された。ただ、今回の学びを端的に表現するならば、「社会の構造的課題を解決していくためには、創造的且つ戦略的に取り組んでいく必要があると再確認したこと」と言える。そして、解決手法には様々なアプローチがあり、正解はない。だからこそ、おもしろい。そのようなワクワク感が改めて自分の中に沸き上がってくる1週間となった。

2年前の2010年より、自分は12年余にわたって習得してきたスキルを統合する形で、構想の実現に向けて動き出している。経営xメディアx教育の3領域における30種を超える専門職の経験は、プロジェクトデザイナー/コミュニケーションデザイナー/教育デザイナーの3つに集約され、地域コミュニティのポテンシャルを引き出すソーシャルデザインワークに応用されつつある。当初想定に近い形に集約されてきているのだが、殆ど前例のない職能&活動スタイルのために周囲の理解を得るのはなかなか難しい。しかしながら、今回、タイの活動家たちと意見交換をするなかで、前例のない課題を解決するには前例のないアプローチになるのは至極当然なのだと再確認する形となった。ワクワクしながら実践あるのみ。Just do it!!

2011-11-25

NEED: 農業分野の地域リーダー育成による社会変革


チェンダオからチェンマイ中心部に戻り、実践的な農業教育を基軸としてミャンマー人の若手コミュニティリーダーを育成する非営利教育機関 NEED(ニード:Network for Environmental and Economic Development)に足を運んだ。2006年にタイ・チェンマイをベースにミャンマー人のKhaing Dhu Wan氏によって設立された当機関は、農業を中心に地域コミュニティづくりを推進したいと考えている有為の若手人材をミャンマー各地から選抜して招聘し、全寮制で6ヶ月の集中トレーニングを行うという非常に興味深い取組を展開している。約2エーカーの農場を拠点としてサステイナビリティに配慮した農業手法を学ぶプログラムはMFI (NEED's Model Farm Initiative) と名付けられ、稲や野菜の栽培を中心とする農業技法だけでなく、コミュニティビルディング、リーダーシップ、研究技法、ITスキル、英語など地域コミュニティづくりを推進する上で必要なノウハウが取り入れられている。創設者からの熱いブリーフィングは、ビジョンにかける想いが込められていた。


実際に生徒のみなさんに各自の問題意識や私生活について聞いてみると、彼らの意識の高さが如実に伝わってくる。大きな変化の渦中にあるミャンマーの政治状況についても各自の着眼点をしっかりと持っており、今後のミャンマーの地域コミュニティの中でどのように活動していくべきかを模索している姿が強く窺えた。このような有為のミャンマーの若手人材が、国境を超えてタイ・チェンマイで大いに学んだ上で自国に戻り、各自の地域コミュニティで力を発揮していくサイクルは非常に興味深い。さらに、NEEDの"N"はNetworkであることからも分かる通り、プログラムの卒業生らがネットワークを形成してお互いの実践事例を共有するプラットフォームへと進化しつつある。設立5年と若い組織であるものの、ソーシャル・イノベーションに結実する可能性を秘めた注目のNEED。この取組に我々も大いに学び、自身のフィールドに是非応用していきたい。

2011-11-24

アショカ・フェロー Nikom Puttaさんとの対談@チェンダオ


チェンマイ中心部からバンで2時間ほど北上すると“星の町”を意味するチェンダオに到着。町の北部はミャンマーとの国境を形成するボーダーエリアである。UNDPコンサルタントの案内とともに、我々はチェンダオのバードセンターのロッジに辿り着いた。出迎えてくれたのは、チェンダオのコミュニティリーダーでアショカ・フェローのNikom Putta(ニコン・プッタ)さん。元・フォレストレンジャー(森林警備隊員)のニコンさんはタイをリードする環境活動家の一人で、チェンダオの村々を巻き込みつつコミュニティベースの森林保護活動を推進する人物として広く知られている。風貌や立居振舞は沖縄離島の民宿にいるオジさんそっくりで、オープンテラスでのセッションが妙に心地よい。ニコンさんをキヤノンのカメラで撮りつつ、我々はティータイムのディスカッションを進めた。

タイでは政府主導で森林政策が展開されてきた経緯があり、森林伐採禁止やダム建設で山村地域の住民を強制移住させるなど、地域コミュニティの実情を軽視したトップダウン型の政策が山村環境を悪化。結果として、森林喪失が進行して地域資源の枯渇が表面化した。この状況を受けて、ニコンさんは、チェンダオの村々の住民と対話しながら連携体制を作り、村々の地域資源をお互いに有効活用する基盤を形成していったのである。思うに、原理としては極めてシンプルで、“自然との共生”や“村々との相互扶助”の精神に基づく地域コミュニティの形成が活動の基軸にある。したがって、活動の体現の仕方は多様となる。近年、ニコンさんが関心をもっている手段は、平和を想うウォークイベントの開催らしい。彼の発言は、極めてスピリチュアルな性質を帯びていた。


ニコンさんとのディスカッションを経て、チェンダオの自然を味わいながら改めて地域コミュニティづくりについて思索を巡らした。自身の中に浮かんできたキーワードは「デザイン(設計)」である。ニコンさんの場合、森林環境を入り口として、タイの山村地域のあり方をデザインしたと言える。その設計図を具現化したのが今のチェンダオの姿。この活動スタイルには非常に親近感を覚える。日本でもニコンさん的な活動を進めている方々に遭遇する機会がよくあり、このような人々を連携して活動を加速できないかというのが自身の関心事の一つ。アショカ財団は社会起業家の概念を提唱して社会を啓発した功績は高い一方、既に社会に認知されている活動家をフェローとして“追認”している様相が強い。地域コミュニティーに埋もれている有能な人材を発掘して支援することこそ、真に必要なことなのではないだろうか… と天然温泉の足湯をしながら考えていた。

2011-11-23

BEAM: タイに逃れたミャンマー人のための松下村塾


ミャンマーからタイに逃れた若年層を対象にチェンマイで実践的な高等教育機会を与えている非営利教育機関BEAM(ビーム:Bridging Educational Access for Migrants)を訪ねた。タイなどに不法入国するミャンマー人の数は年間200万人に上ると言われているが、諸事情あってタイに流れ着いた志ある若年層が高等教育の機会を得られるようにと2年前に設立された機関である。大学進学を目指す生徒へのアカデミックコース、DTPやウェブデザインなどクリエイティブスキルに特化した職業教育コースを提供している。将来的にはタイで経験を積んだミャンマー人の若年層が自国に戻って、国を良くするために活動を展開していくような架け橋(Bridge)になりたいと創業者が話してくれた。

ファカルティメンバーとのディスカッションの後、生徒のみなさんと懇親を深める機会を頂いた。個別に話を聞いてみると、年齢は18歳〜30歳と幅広く、出身もカチン族やシャン族など多様なバックグラウンドをもつこと分かった。社会的には不法入国の扱いとなってしまう彼らは経済的にやはり厳しい状況に置かれており、殆どの生徒はマーケットなどで仕事をしながらBEAMプログラムに通っている。寝る時間を削ってでもプログラムに参加するのは、社会を生き抜くスキルや知識を身につけなければ現実的に良い仕事を得ることができないという事情もある。様々な逆境の中で取り組む姿に感銘を受けるとともに、BEAMが松下村塾のように時代を動かす原動力の一翼を担うポテンシャルとなることを願いたい。

2011-11-22

チェンマイ突撃☆スカベンジャーハント


非営利教育機関Learning Across BordersThai Civil Society Program2日目。20人のグループでタイ・バンコクから約1時間のショートフライトでチェンマイに到着後、Scavenger Hunt(スカベンジャー・ハント)を実施。数人で構成するチームを複数作り、街に繰り出すTo-Doリストを各チームに与えるウォークラリー。ゲーム感覚で街を探索しながら現地への理解を深めることを目的としたもので、現地のNGO活動家の協力を得て実施した。リストには、「Take a photo with local students in uniform(制服を着た現地の学生と一緒に写真を撮ってきてください)」「Get local fruits in currently in season(旬の地元産フルーツを手に入れてきてください)」など、20項目を超えるお題が書かれている。今回、自分も参加者側に加わってチェンマイの街を探索した。

チェンマイは、メガシティーのバンコクに比べると徒歩で十分に回れるコンパクトシティー。ミャンマー人のチームメイトとともにTo-Doリストをこなしながら突撃を繰り返した。道ゆくタイ人を唐突に呼び止めて現地情報を聞き出したり、工科大学のキャンパスに突撃して生協らしき店で物品を調達したり、寺院の裏口に侵入して袈裟着たお坊さんにディープに詰問したり…。スカベンジャー・ハントというよりは、ミッション・インポッシブルのイーサン・ハントだ。あっという間に制限時間の3時間が経過して、全チームでのレポーティングを行った。今回の経験を通じて、スカベンジャーハントは、初めて行く土地を理解するのに極めてエキサイティングで有効な手法であると体感。日本の地域視察においても十分に活用余地があるかもしれないとの閃きを得た。