2011-11-29

寄稿:茨城県つくば市のICT教育事例書


自身の教育分野における専門性を活かす形で本年より慶應義塾大学SFC研究所の上席訪問所員として参画させて頂いている「地域情報化研究コンソーシアム(代表:國領先生)」の教育分科会では、地方自治体の教育分野におけるICTの利活用について調査研究を進めている。全国の様々な地方自治体に足を運び、首長・教育長・情報システム担当者との議論を深める中で、次第に地方自治体の学校教育におけるICT利活用の実態が浮き彫りとなりつつある。その中でも、教育分野におけるICTの利活用において日本をリードする自治体の一つが“つくば市”。そのつくば市が、ICT教育の最新事例をまとめた本を出版されるということで、調査研究を進める立場から見たつくば市について同書に寄稿させて頂いた。これが、この度、書籍『21世紀のICT教育とその成功の秘訣』として出版されるに至ったことをご案内させて頂きたい。

これまでの研究活動に基づくと、自治体は主として3つのパターンに分類される。すなわち、①ICTインフラ整備の議論に終始している自治体、②ICTリテラシー教育の展開に注力している自治体、③学校教育において積極的にICTを利活用している自治体である。実際には、①ICTインフラ整備や②ICTリテラシー教育の議論にとどまる自治体が殆どであり、③ICT利活用に話が及んでいる自治体は片手で数える程しかない。このような現状の中で、つくば市は“学校教育にICTを存分に利活用している”数少ない自治体の一つ。様々な授業で取り入れられている電子黒板を使ったプレゼンテーション、TV会議システムを利用した環境教育やキャリア教育、スタディーノートポケットやデジカメを実践的に使った授業。そのような実践的ノウハウが集積された本書は、ICT利活用に注目する教育関係者には示唆深い内容となっている。

2011-11-27

炎の1週間タイプログラム完了!


Learning Across Bordersによるスタディープログラム "Thai Civil Society Program 2011" がコンプリートを迎えた。ディレクターのドワイト・クラークさんの引率のもと、タイをフィールドに Civil Society ベースの取組を体感的に学ぶ1週間のショートプログラムは、日本とミャンマーから参加してくれた20名弱の学生それぞれの積極的な貢献によって相互を高め合う場に昇華した。どのセッションでも質問が途切れること無く、グループ内のディスカッション・アジェンダは非常に多岐に及んだ。また、全員の共通言語としての英語によるコミュニケーションの徹底が実現されたことも印象深い。自身はファカルティとして参画している身ではあるものの、参加者のみんなから学ぶことのほうが遥かに多く、貴重な1週間をともに創り上げてくれた全員に御礼申し上げたい。

昨年新設された当プログラムの現場随行は自身も初めてで、日本で地域コミュニティづくりのプロジェクトを推進している立場としては、実に興味深い事例のオンパレードに多くの示唆を得たように思う。イノベーションモデル、人材育成システム、住民エンロールメント…。国の文化に紐づく独自の視点はあるものの、国を越えて汎用的に応用できる視点も多々散見された。ただ、今回の学びを端的に表現するならば、「社会の構造的課題を解決していくためには、創造的且つ戦略的に取り組んでいく必要があると再確認したこと」と言える。そして、解決手法には様々なアプローチがあり、正解はない。だからこそ、おもしろい。そのようなワクワク感が改めて自分の中に沸き上がってくる1週間となった。

2年前の2010年より、自分は12年余にわたって習得してきたスキルを統合する形で、構想の実現に向けて動き出している。経営xメディアx教育の3領域における30種を超える専門職の経験は、プロジェクトデザイナー/コミュニケーションデザイナー/教育デザイナーの3つに集約され、地域コミュニティのポテンシャルを引き出すソーシャルデザインワークに応用されつつある。当初想定に近い形に集約されてきているのだが、殆ど前例のない職能&活動スタイルのために周囲の理解を得るのはなかなか難しい。しかしながら、今回、タイの活動家たちと意見交換をするなかで、前例のない課題を解決するには前例のないアプローチになるのは至極当然なのだと再確認する形となった。ワクワクしながら実践あるのみ。Just do it!!

2011-11-25

NEED: 農業分野の地域リーダー育成による社会変革


チェンダオからチェンマイ中心部に戻り、実践的な農業教育を基軸としてミャンマー人の若手コミュニティリーダーを育成する非営利教育機関 NEED(ニード:Network for Environmental and Economic Development)に足を運んだ。2006年にタイ・チェンマイをベースにミャンマー人のKhaing Dhu Wan氏によって設立された当機関は、農業を中心に地域コミュニティづくりを推進したいと考えている有為の若手人材をミャンマー各地から選抜して招聘し、全寮制で6ヶ月の集中トレーニングを行うという非常に興味深い取組を展開している。約2エーカーの農場を拠点としてサステイナビリティに配慮した農業手法を学ぶプログラムはMFI (NEED's Model Farm Initiative) と名付けられ、稲や野菜の栽培を中心とする農業技法だけでなく、コミュニティビルディング、リーダーシップ、研究技法、ITスキル、英語など地域コミュニティづくりを推進する上で必要なノウハウが取り入れられている。創設者からの熱いブリーフィングは、ビジョンにかける想いが込められていた。


実際に生徒のみなさんに各自の問題意識や私生活について聞いてみると、彼らの意識の高さが如実に伝わってくる。大きな変化の渦中にあるミャンマーの政治状況についても各自の着眼点をしっかりと持っており、今後のミャンマーの地域コミュニティの中でどのように活動していくべきかを模索している姿が強く窺えた。このような有為のミャンマーの若手人材が、国境を超えてタイ・チェンマイで大いに学んだ上で自国に戻り、各自の地域コミュニティで力を発揮していくサイクルは非常に興味深い。さらに、NEEDの"N"はNetworkであることからも分かる通り、プログラムの卒業生らがネットワークを形成してお互いの実践事例を共有するプラットフォームへと進化しつつある。設立5年と若い組織であるものの、ソーシャル・イノベーションに結実する可能性を秘めた注目のNEED。この取組に我々も大いに学び、自身のフィールドに是非応用していきたい。

2011-11-24

アショカ・フェロー Nikom Puttaさんとの対談@チェンダオ


チェンマイ中心部からバンで2時間ほど北上すると“星の町”を意味するチェンダオに到着。町の北部はミャンマーとの国境を形成するボーダーエリアである。UNDPコンサルタントの案内とともに、我々はチェンダオのバードセンターのロッジに辿り着いた。出迎えてくれたのは、チェンダオのコミュニティリーダーでアショカ・フェローのNikom Putta(ニコン・プッタ)さん。元・フォレストレンジャー(森林警備隊員)のニコンさんはタイをリードする環境活動家の一人で、チェンダオの村々を巻き込みつつコミュニティベースの森林保護活動を推進する人物として広く知られている。風貌や立居振舞は沖縄離島の民宿にいるオジさんそっくりで、オープンテラスでのセッションが妙に心地よい。ニコンさんをキヤノンのカメラで撮りつつ、我々はティータイムのディスカッションを進めた。

タイでは政府主導で森林政策が展開されてきた経緯があり、森林伐採禁止やダム建設で山村地域の住民を強制移住させるなど、地域コミュニティの実情を軽視したトップダウン型の政策が山村環境を悪化。結果として、森林喪失が進行して地域資源の枯渇が表面化した。この状況を受けて、ニコンさんは、チェンダオの村々の住民と対話しながら連携体制を作り、村々の地域資源をお互いに有効活用する基盤を形成していったのである。思うに、原理としては極めてシンプルで、“自然との共生”や“村々との相互扶助”の精神に基づく地域コミュニティの形成が活動の基軸にある。したがって、活動の体現の仕方は多様となる。近年、ニコンさんが関心をもっている手段は、平和を想うウォークイベントの開催らしい。彼の発言は、極めてスピリチュアルな性質を帯びていた。


ニコンさんとのディスカッションを経て、チェンダオの自然を味わいながら改めて地域コミュニティづくりについて思索を巡らした。自身の中に浮かんできたキーワードは「デザイン(設計)」である。ニコンさんの場合、森林環境を入り口として、タイの山村地域のあり方をデザインしたと言える。その設計図を具現化したのが今のチェンダオの姿。この活動スタイルには非常に親近感を覚える。日本でもニコンさん的な活動を進めている方々に遭遇する機会がよくあり、このような人々を連携して活動を加速できないかというのが自身の関心事の一つ。アショカ財団は社会起業家の概念を提唱して社会を啓発した功績は高い一方、既に社会に認知されている活動家をフェローとして“追認”している様相が強い。地域コミュニティーに埋もれている有能な人材を発掘して支援することこそ、真に必要なことなのではないだろうか… と天然温泉の足湯をしながら考えていた。

2011-11-23

BEAM: タイに逃れたミャンマー人のための松下村塾


ミャンマーからタイに逃れた若年層を対象にチェンマイで実践的な高等教育機会を与えている非営利教育機関BEAM(ビーム:Bridging Educational Access for Migrants)を訪ねた。タイなどに不法入国するミャンマー人の数は年間200万人に上ると言われているが、諸事情あってタイに流れ着いた志ある若年層が高等教育の機会を得られるようにと2年前に設立された機関である。大学進学を目指す生徒へのアカデミックコース、DTPやウェブデザインなどクリエイティブスキルに特化した職業教育コースを提供している。将来的にはタイで経験を積んだミャンマー人の若年層が自国に戻って、国を良くするために活動を展開していくような架け橋(Bridge)になりたいと創業者が話してくれた。

ファカルティメンバーとのディスカッションの後、生徒のみなさんと懇親を深める機会を頂いた。個別に話を聞いてみると、年齢は18歳〜30歳と幅広く、出身もカチン族やシャン族など多様なバックグラウンドをもつこと分かった。社会的には不法入国の扱いとなってしまう彼らは経済的にやはり厳しい状況に置かれており、殆どの生徒はマーケットなどで仕事をしながらBEAMプログラムに通っている。寝る時間を削ってでもプログラムに参加するのは、社会を生き抜くスキルや知識を身につけなければ現実的に良い仕事を得ることができないという事情もある。様々な逆境の中で取り組む姿に感銘を受けるとともに、BEAMが松下村塾のように時代を動かす原動力の一翼を担うポテンシャルとなることを願いたい。

2011-11-22

チェンマイ突撃☆スカベンジャーハント


非営利教育機関Learning Across BordersThai Civil Society Program2日目。20人のグループでタイ・バンコクから約1時間のショートフライトでチェンマイに到着後、Scavenger Hunt(スカベンジャー・ハント)を実施。数人で構成するチームを複数作り、街に繰り出すTo-Doリストを各チームに与えるウォークラリー。ゲーム感覚で街を探索しながら現地への理解を深めることを目的としたもので、現地のNGO活動家の協力を得て実施した。リストには、「Take a photo with local students in uniform(制服を着た現地の学生と一緒に写真を撮ってきてください)」「Get local fruits in currently in season(旬の地元産フルーツを手に入れてきてください)」など、20項目を超えるお題が書かれている。今回、自分も参加者側に加わってチェンマイの街を探索した。

チェンマイは、メガシティーのバンコクに比べると徒歩で十分に回れるコンパクトシティー。ミャンマー人のチームメイトとともにTo-Doリストをこなしながら突撃を繰り返した。道ゆくタイ人を唐突に呼び止めて現地情報を聞き出したり、工科大学のキャンパスに突撃して生協らしき店で物品を調達したり、寺院の裏口に侵入して袈裟着たお坊さんにディープに詰問したり…。スカベンジャー・ハントというよりは、ミッション・インポッシブルのイーサン・ハントだ。あっという間に制限時間の3時間が経過して、全チームでのレポーティングを行った。今回の経験を通じて、スカベンジャーハントは、初めて行く土地を理解するのに極めてエキサイティングで有効な手法であると体感。日本の地域視察においても十分に活用余地があるかもしれないとの閃きを得た。

 

2011-11-21

タイプログラム2011スタート@バンコク


Learning Across BordersThai Civil Society Programが幕を開けた。タイをフィールドにCivil Sosiety(ソーシャルセクター)のムーブメントを体感的に学ぶ1週間のインテンシブ・スタディープログラム。ディレクターのドワイト・クラークさんとともに、今回もファカルティとして参画することになった。早いもので、当NGOの活動を続けて11年目となる。もともとスタンフォード大学を拠点にドワイトさんが50年前に設立した非営利教育機関VIAの企画・運営で開始されたスタディープログラムで、アジアの大学生を対象に体感的な学びの機会を創出することが主たる目的。自身も大学4年の際に参加した経緯をもち、以来、気がつけば10年余にわたってマネジメントサイドで活動している。

今回のプログラムは昨年新設されたもので、20人のグループは半数が日本の学生、半数がミャンマーの学生で構成されている。初日から超過密スケジュールで、午前はバンコク郊外のスラムを訪ねて視察するとともに、当地を支援するデゥアンプラティープ財団でディスカッション。昼にはチュラロンコーン大学に足を運んで、ティティナン教授からタイの政治事情についてブリーフィング。さらに、 国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチのバンコクオフィス・ディレクターとのセッションが続いた。夜にはリフレクション・セッションとして一日の学びをグループで議論し、初日から熱いスタートを切ることになった。明日はチェンマイに北上して更にディープな日々が続く。今回はどんな1週間になるのだろうか!?

2011-11-16

「道のカフェ」映像レポート公開

スターバックス、キヤノン、松下政経塾の連携による復興支援プロジェクト「道のカフェ」の映像レポートがYouTubeで公開となった。これは、全国ネットのFMラジオ番組 JFN “ON THE WAY ジャーナル WEEKEND” が、ラジオ番組と連動して特別に制作して下さった7分弱のダイジェスト版映像である。冒頭には、先月来日して被災地を視察されたスターバックス創業者のハワード・シュルツ会長に頂いたメッセージとともに、初夏のプロジェクト立ち上げからずっとご一緒させて頂いているスターバックス東日本営業本部長の巌真一宏さんのインタビューを収録。映像本編では、気仙沼および陸前高田の皆様のインタビューを綴っている。被災地の皆様の声を広くお伝えするために、是非、共有のご支援を頂ければ幸いです。

2011-11-12

気仙沼の復興まちづくり最前線


東京大学の都市持続再生学チーム(東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻)の20名弱で宮城県気仙沼市を訪ね、復興まちづくり条例策定のための現場調査を実施。壊滅的な被害を受けた気仙沼の市街地を歩き、3.11から満8ヶ月を経た街の現状を探った。過酷な状況からの復旧が進むも、やはり1,000を超える尊い命を吞み込んだ津波の爪痕の深さを肌で感じずにはいられない。潮位の変動とともに冠水を繰り返す区画、警察署前に横転し続ける漁船、地盤沈下のために嵩上げされた道路…。復興という言葉の重みが身体に響く。

ここ気仙沼は、自身が復興支援プロジェクト「道のカフェ」の活動フィールドとして恊働させて頂いてきた経緯があり、今回、東大チームでのフィールドも偶然重なった形となる。先月も「道のカフェ」の現場(映像)にて、松下政経塾の先輩にあたる小野寺五典代議士や気仙沼市の舵を取る菅原茂市長と対談をさせて頂いたばかりで、実にタイムリーな展開。3.11直後からの救援物資プロジェクト、初夏からのコミュニティ再構築支援プロジェクト、そして、この秋からのまちづくり支援プロジェクトと、ご縁が重なる形で現在に至っているように思う。


午後から市民会館にて気仙沼市役所各課の皆様とのディスカッション。企画政策課、まちづくり推進課、水産課、都市計画課、商工課より現状と課題を中心にお話を伺った上で具体的な意見交換を展開した。議論の争点は、10月に打ち出された気仙沼市震災復興計画。「海と生きる」というタイトルを冠した本計画は気仙沼市のマスタープランに位置づけられ、いかにその実現を図るかが最大の論点となる。経営戦略の立場から見ると、企業で言う中計(中期経営計画)の揉み直しと実行体制の議論そのものである。

気仙沼を含む多くの被災自治体の復興計画策定には都市計画コンサルが関与しているが、この分野に言うコンサルの種別を紐解くと殆どがインフラ系またはシンクタンク系。勿論、その専門支援は必要。ただ、自身が現場に入りながら見えてきたのは、この分野にこそ経営戦略の知見をもつマネジメントのプロフェッショナルが必要だという仮説である。全体戦略設計とPMOが機能してこそ、ハードとソフトの各論が活きてくる。指揮者なしのオーケストラでは調和的な演奏は難しい。マネジメントという専門職能はもっと見直されてもよいのではないか。

そんな思索を巡らせながら、夜はプレオープンしたばかりの復興屋台村へ。被災された飲食店の皆様が集まって出店した仮設商店街。どの店も満員御礼に近い大盛況のなか、何とか席を確保できた気仙沼ホルモンのお店で肉を焼いていると、サンドウィッチマンも取材で駆けつけて入ってきた。プレオープンの夜が次第にフィーバーしていく。その空気感に包まれながらシンプルな原理を思い出す。復興には計画や制度も必要だが、やはり事を為すには論理を超えた人のエネルギーが必要。何事もやってみなければ始まらない。だから、Just do it!!

2011-11-09

声による瞬間芸術 〜Android au CMナレーション1周年〜


自身の構想に基づくソーシャルデザインワークを推し進める上で、取組活動やアイデアを広く伝える表現活動は重要な一翼を担っている。状況に合わせて様々な表現チャネルを柔軟に活用する形で情報発信を展開しており、DJ/MC/ナレーターという声による表現もその一つ。直近のCMナレーション活動実績を整理していた際、ちょうど昨年の今頃にCMナレーションを務めさせて頂いた "Android au with Google" のレディー・ガガ編の全CMをとりまとめた高画質動画を偶然にYoutubeで発見。自身のCMナレーション活動歴においても代表作の一つになったメモリアル作品で、改めて貴重な巡り合わせに深く感謝するとともに、声による瞬間芸術のもつ深みに想いを馳せていた。



とりわけ、コーポレート・アイデンティティに直結する一発一言系のCMナレーションは、微細な違いで受け手の印象を大きく変える奥深い世界。声のトーン、滑舌、スピード、ブレス、間、崩しなど、複数の変数の組み合わせを瞬間的にコントロールして表現する。これを分単位で限られた収録時間内に体現するのは容易ではないが、自身の置かれる1回限りのシチュエーションの中で何をどこまで表現できるかを問われるという点において、自分にとって非常に魅力的な瞬間芸術であり続けている。自身の構想を世に伝えていきたい想いと表現追求への純粋なる好奇心から始めたDJ/MC/ナレーション活動も15年目になるが、声による表現追求は飽くなき創造の世界に自身を惹き付けてやまない。

2011-11-03

紅葉の日光探訪:日本文化とまちづくり論


秋深まる11月、紅葉が色づく日光へ。1999年に世界遺産として登録された「日光の社寺」を巡りながら、日本文化とまちづくりの関係性について考察していた。ちょうど先月、東京大学にて「日本の文化は日本の都市や集落等のまちづくりにおいて、どのような役割を担っているか」というテーマで議論した経緯もあり、この時期の日光散策は討議内容のフィージビリティスタディには最適であった。“日本の文化とは?”というと議論は発散に向かうことが多いが、論理的に収束させてみると実は興味深い。一つずつ思考の原点を紐解いていくことで、何を日本の文化と定義付けているのか見えてくる。

人によって日本文化の定義は異なるのだろうが、世界30ヶ国を遍歴して日本を見たとき、自分は“万物に生命が宿る”という価値観に日本らしさを強く感じている。その価値観が日本に脈々と流れているからこそ、あらゆる素材の持ち味(=生命)を活かすという視点が生まれ、自然と生活様式に展開されているように思う。神社はその典型。社殿と木々の調和、絶妙な借景のバランス、温かみを感じる建材…。境内を歩いて感じる「心安らぐ日本らしさ」。海外では味わえない“この感じ”は何か。きっと神社の随所に表現された“万物に生命が宿る”という価値観に少なからず反応しているのだろう。日本文化に根ざしたまちづくりを深堀してみたい。